沖田総司と運命の駄犬
僕は、土方さん達と、京へ行くこととなった。
沖田「ねぇ、山南さん。京は、どんな所なんでしょうね?」
山南「それは、色々な物が集まる、賑やかな所だ。人も物も、甘味もね。」
沖田「へへへ。どんな甘味があるのか楽しみだな。山南さんは、何が、楽しみですか?」
山南「んー。僕は、書物かな?」
沖田「強い人も居るんだろうなぁ・・・。楽しみです。」
山南「ふふっ。本当に、君は、剣の腕を磨くことが好きだね。」
沖田「僕には、コレしかありませんから。」
そう言って、刀を、そっと撫でた。
そんな、僕が、京に来て、しばらくした時・・・。
僕は、お気に入りの甘味処に、団子を、買いに来ていた。
沖田「団子、10本、下さい。」
売り子「はいよ。」
僕は、団子を受け取り、帰ろうとすると・・・。
「すみません。団子を5本下さい。」
売り子「すいませんねぇ。さっきのお客さんで、売り切れたのよ。」
「そんな・・・。もう、今日がヤマの病人の方が譫言でここの団子のことを言ってたもので・・・悔いが残って欲しくなくて・・・。」
売り子「そんな事、言われてもねぇ。」
この団子・・・。
沖田「あの・・・。これよかったら、どうぞ。」
「でも・・・。」
沖田「ここの団子は、美味しいから、悔いが残ると思いますよ?僕は、いつだって買いに来れるし。どうぞ、受け取って?」
そう言って、団子を渡した。
「ありがとうございます。あの・・・。お名前は?」
沖田「壬生浪士組の沖田と申します。」
名乗った瞬間、周りにいた人達が、振り返り、顔をしかめた。
美代「壬生浪士組の沖田様。私は、美代と申します。お団子、ありがとうございました。」
そう言うと、お美代さんは、団子を受け取り、踵を返した。
数日後、お美代さんが屯所に来た。
美代「先日は、ありがとうございました。これ・・・。」
そう言って、渡されたのは、あの団子だった。
沖田「別に、良かったのに。あ・・・。良かったら、一緒に食べませんか?」
そして、近くの寺に行き、話をしながら、団子を食べた。
僕達は、意気投合して、また、会う約束をした。
そして、恋仲になった。
こんな、気持ちは初めてだ。
でも・・・。
町を二人で歩いていると、ヒソヒソと言われる。
お美代ちゃんは、それを気にしているようだった。
当たり前の事だ。
だって、お美代ちゃんは、お医者様の娘さんだ。普通の家の人・・・。
かたや、僕は、壬生狼と蔑まれている。
だから、逢瀬するときは、いつも、人気のない、空き家で逢瀬した。
僕達は、まだ、手を握りあう関係だ。
お美代ちゃんの事は、大事にすると決めている。
恋仲になって、お美代ちゃんは、ヤキモチ焼きだと知った。
思い込みも、激しい。
他のおなごと話をするだけでも、嫌がる。
でも、僕は、それが、少し嬉しかったりもする。
それだけ、僕のことを、好きということだと思うから。
そんなときだった。あの、犬っころが、来たのが・・・。
あの、犬っころが、僕のささやかな幸せをぶち壊した。