沖田総司と運命の駄犬
僕は、おなごを引きずり、土方さんの部屋に来た。
沖田「失礼しますよっ!」
相変わらず、難しい顔して、書簡を書いている。
沖田「怪しいのが、いたので、連れて来ました。僕や、土方さんの事、知ってるんですよ。」
さぁ、鬼の尋問の始まりだね。
この子、正気で居られるかな?
土方「お前、名は?」
梓「寺井 梓です。」
土方「幾つだ?」
梓「じゅ、17です。」
沖田「17!?嘘!?こんな17いるの?なんか、頼りなさすぎ・・・。顔は、それなりの歳かと思ったけど、喋り方とか、有り得ない・・・。」
梓「あ!数えで18です。」
嘘!?こんなのが!?
信じられない!
沖田「ええぇぇぇ!?」
土方さんは、表情を一切、崩さない。
土方「で?どっから、来た?」
これを聞いたおなごの顔がパァと明るくなった。
梓「えっと!私は、約150年程未来から来ましたっ!」
沖田「は?」
コイツ何、言ってんの?
梓は、これまでの事を得意げに話しているが、信じられる訳がない。
梓「なので、私は、用事が、無いなら、占い屋 忠兵衛に行って、元の時代に帰りたいんです。」
占い屋ってあの神隠しとか、噂になった奴だ・・・。
沖田「あのさ・・・。その占い屋忠兵衛って、ちょうど、5、6年程前に、流行ったんだけど、いきなり、消えたんだ。だから、狐じゃないかって・・・ねぇ?」
土方「あぁ。」
梓「じゃ、じゃあ、沖田先輩は?土方さんって人の為に、時渡りして来たって・・・っ。」
沖田「僕は、ずっと、ここにっていうか、土方さんと一緒だったよ?ちなみに、その人が、土方さん。」
梓「嘘っ!?じゃあ、取り憑かれてるっていうのは・・・。」
そこは、否定できない。
沖田「まぁ、何かに、取り憑かれてるってのは、合ってるか・・・も。痛っ!」
土方さんにバシッと叩かれた。
本当に、この人は、冗談が、通じないんだから・・・
梓「じゃあ、私は、どうやって、帰ったら良いんですか!?沖田先輩!」
梓が、僕に、助けを求めて来たが、はっきり言って、手に負えない。
沖田「そんなの知らないよ!」
梓「そんなの酷いよ・・・。だって、沖田先輩が・・・。沖田先輩が、守るって言ってくれたから、ここまで、来たのにっ!」
遂に、泣き出したよ。この子・・・。
沖田「そんな事、言っても、僕は、知らないし!」
土方「はぁ・・・。つまりだ。お前は、行く宛が、無いと言うことか?」
梓「はい・・・。」
土方「そうか・・・。だったら、どっかで、働けるように・・・。」
梓「沖田先輩の側にいます!」
意志の強い目で言い切ってるし・・・。
それに、フッと笑った土方さん。
嫌な予感がする・・・。
沖田「なっ!ばっ!馬鹿な事、言わないでよ!お美代ちゃんにも、勘違いされてるのに、お前みたいなのが、引っ付いていたら、余計に・・・。」
ポンと、土方さんが、僕の肩を叩く。
土方「お前が、子守な?」
ニヤリとする土方さん。
沖田「無理ですって!」
土方「おい、寺井、お前は、総司の側が良いんだろう?」
梓「はい!」
“迷惑”を全身で、表しても、飄々としている梓。
土方さん何で、いつもと違って、優しいんだ?
確かに、こんなのが間者とは思いにくいけど・・・。
土方「じゃあ、ここに置いてやる。その代わり、未来のことを、教えろ。」
梓「未来のこと?」
土方「そうだ。お前、この時代の事を知ってるんだよな?だったら、この先、何が起こるか、わかるんだろ?」
梓「いや・・・。それが・・・。勉強苦手で、特に、歴史は、欠点ばっかで・・・。」
やっぱり、バカなんだよ。
沖田「はぁ・・・。つまり、役立たずなんですよ!お荷物って事でしょ?」
梓「沖田先輩!相変わらずの私にだけ、毒舌・・・。」
沖田「取りあえず、どうするんですか?」
腕組みをして、眉間にシワを寄せていた土方さんが、はぁ・・・。と溜め息をついた。
土方「何か、取り柄もあるだろう。総司、取りあえず何でも、やらせてみろ。」
あーあ。土方さん、この子のこと、気に入っちゃったよ・・・。
僕は、仕方なく梓を自分の部屋に連れて行った。