沖田総司と運命の駄犬
犬の面倒、ちょこだと割に合いませんっ!~沖田side~
僕は、梓を見る。
この格好はマズいな。
他に、着る物を、見せて貰ったが、どれも、ヘンテコな物ばかり。
こんなの着てると、また、狙われる・・・。
あ・・・。そうだ!男装させよう!
それなら、ずっと、一緒にいても、屯所の人間にも、お美代ちゃんにも、変な目では、見られないだろう。
沖田「取りあえずその格好じゃ目立つから、着替えて?」
タンスから、数着、着物を渡した
沖田「やっぱり、大きいか・・・。」
沖田「これ、あげるから、自分の寸法に直しなよ。取りあえず、今日は、そのまま着ておいたらいいよ。」
しかし、梓は、固まってる。
梓「あの・・・。私、裁縫とか、出来な・・・。」
沖田「はぁ!?おなごのくせに裁縫、出来ないの!?信じられない!当たり前のことだよ?」
未来のおなごは、こんな事も、出来ないの!?
嘆かわしい。
梓「家庭科の授業では、しましたけど・・・。」
僕は、梓の実力を見ることにした。
沖田「取りあえず、してみなよ。見てあげるから・・・。」
梓「はい・・・。」
チクチク・・・。
梓「痛っ!」
チクチク・・・。
梓「っ!」
チクチク・・・。
梓「いっ!」
謙遜で、出来ないと、言ってるのかと、思ったが、本物のヤツだ。
沖田「はぁ・・・。貸して!」
僕は、着物を、ひったくると、着物の裾上げを始める。
梓「スゴーイ!!しかも、綺麗!先輩って、手先器用なんですね!」
沖田「おなごなら、これくらい出来て当たり前だよ?」
梓「でも、先輩、男ですよね?」
沖田「僕は、小さい頃から、家族と離れて暮らしてたから、こういう事が、出来るだけ。君は、おなごなんだから、こういうのが出来ない自分を恥じるべきだよ?」
梓「う゛・・・。」
さっさと、嫁に行け作戦は、失敗だ・・・。
沖田「はい。」
着物を、渡したが、また、固まる。
梓「ありがとうございます!あの・・・。着物の着方が・・・。」
沖田「まさか、わからないとか・・・?」
いくら、仏の僕でも、我慢の限界だ。
梓「あの・・・その・・・はい・・・。」
沖田「はぁぁぁぁぁー。」
僕は、今までついた溜め息で一番の溜め息を、吐いた。
沖田「脱いで!」
梓「え!?」
沖田「その召し物、脱いで!」
梓「嫌です!」
何、コイツ。いっちょ前に、恥じらってるの?
バカか?
沖田「あっそ。じゃあ、その変な着物着て、さっきみたいに、売られそうになったら?今度は、助けないから。」
梓「う゛・・・。」
沖田「もしかして、そこだけ、おなごのように、恥じらってるの?だったら、他のことで、恥じらうことばっかりじゃない?どうするの?」
挑発すると、乗ってきた。
梓「わかりましたっ!」
チラッと見えた胸元は、言うなれば、洗濯板。
恥ずかしそうにしている梓に、冗談のつもりで言う。
沖田「そんな体で、恥ずかしがらなくて、良いんじゃない?」
梓「え?」
沖田「顔は歳相応だけど、体は、わらしじゃない。」
梓「なっ!さっ・・・最っっ低!!!」
梓は、僕に背を向け、小刻みに、震えている。
泣いてる。
まぁ、冷静に考えれば、言い過ぎだ。
僕は、後ろから、梓に襦袢を掛けた。
沖田「ごめん。今のは、言い過ぎた。」
ゆっくりと、梓を、反転させて、向かい合う。
でも、胸元は見えないように綺麗に整える。
着物を着付けて、ふと、思う。
この子には、何で、こんなに、素直に何でも言えるのかな・・・?
僕は、小さいときに、道場に内弟子として入った。
色んな大人の中で、相手の空気を読む事も覚えた。
なのに、この子には、なんか、思ってる事を、そのまま言ってしまう。
きっと、この子が、この時代の人ではないからかも・・・。
沖田「なんか、君だと、イジワルしたくなるんだよね・・・。」
僕は、梓の頭にポンと手を置いた。
僕しか頼る人がいないんじゃ、僕が守ってあげないとだな・・・。
そんな事を思っていた。