沖田総司と運命の駄犬
近藤先生と向かいあって座る。
沖田「近藤先生、僕、何か、ヘマをしちゃったんでしょうか?」
近藤「いや。お前は、本当に、良くやってくれている。梓は、無事だったのか?」
沖田「はい。目を離して、すみませんでした。」
近藤「ずっと、屯所じゃ、息も詰まるだろう。また、どこかに連れて行ってあげなさい。」
沖田「はい・・・。」
近藤「ところでだ。本題に入る。」
沖田「はい。」
近藤「総司。お前、恋仲がおるのか?」
お美代ちゃん?
総司「はい・・・。」
僕は、何を言われるのか、怖かった。
間者だったとか?
近藤「お前達は、コソコソと会っているそうではないか・・・。」
沖田「あ・・・。」
近藤「どんな、娘さんなんだ?」
沖田「お医者様の娘さんで・・・。名前をお美代さんと言います。」
近藤「そうか・・・。総司、よく聞け。相手は、普通のご家庭の娘さんだ。でも、お前は、壬生浪士組の副長助勤・・・。お前には、これから、色々と働いて貰わねばならない。」
沖田「ど・・・。どういう事ですか?」
近藤「別れなさい。」
沖田「っ!・・・ちょっと、待って下さい!確かに、お美代ちゃんとは、立場などが、違います!でも・・・。ちゃんと、勤めはします!なので、お願いします!お付き合いを許して下さい!お願いします!」
僕は、頭を下げて、お願いした。
近藤「総司・・・。お前の、お役目を・・・立場をよく考えろ。お前のやっていることを、相手のご家族は、納得出来るか?我々のお役目は、なかなか、理解されがたい・・・。」
僕達は、粛清や暗殺などもする。
一番隊助勤として、これからそういう機会は、たくさんあるだろう。
そうか・・・。
近藤先生の心はもう、決まってる。
お美代ちゃんと、別れろと、言ってる・・・。
お美代ちゃんの事は、大切だ。
でも、僕は、近藤先生の為にここまで来てる。
沖田「そうですね・・・。僕は、ここが・・・一番大切です。それに、普通の家のお美代さんを・・・巻き込む訳にはいきません・・・っ。」
近藤「その娘さんには、こちらから、良いところへ嫁げるよう手配する。他の人の奥方になった方が、お前も諦められるだろう?」
何も、言えない・・・。
沖田「っ。・・・お願い・・・します・・・っ。」
僕は、涙が、こぼれ落ちた。
沖田「っ。・・・うっ・・・うっ・・・うっ・・・。」
近藤「総司・・・。お前は、ここには、無くてはならない人間だ。わかってくれて良かった・・・。」
僕は、一礼をして、部屋から出た。
近藤先生の部屋から離れて、僕は、庭に出た。
沖田「うっ・・・。うっ・・・。うっ・・・。お美代ちゃん・・・。」
僕は、君を、忘れられるんだろうか・・・。
僕は、庭の片隅で、しばらく泣いた。