沖田総司と運命の駄犬
今宵は眠れそうにない。
辺りが、明るくなってきた。
すると・・・。
ピクリと、梓の指が動く。
僕は、絡めていた指を、サッと離す。
梓「ん・・・。しまったぁぁぁ!!」
そう叫んで、飛び起きた梓。
沖田「ぷっ。」
その光景が可笑しくて、笑いそうになるが、寝たふりをしていると・・・。
梓「やってしまった・・・。」
梓は、そう呟いて、僕の顔をのぞき込む。
梓「この人、沖田先輩だよね・・・?まさか、偽物?」
パチッと、僕は、目を開けた。
梓「ウワッ!」
沖田「本っっ当、失礼な奴だよね?僕が、優しいと、偽物なワケ?」
梓「いえ!決して、そんな・・・っ。ありがとうございます!」
いつものようにイジワルを言っていたが、梓が、あれ?という顔をする。
梓「沖田先輩・・・。何か、あったんですか?」
この子、バカなのに、鋭い。
僕は、わざと、圧力的に言った。
沖田「あったよ。飼い犬がね、昨日、逃げてね、夜中まで、探していて、クタクタ。お説教しようと、動くなと言っておいたら、ご主人様より、先に寝てるの。」
梓「う゛・・・。」
沖田「でね?蹴っ飛ばして、起こそうかと、思ったんだけど、あまりにも気持ち良さそうに寝てるから、布団を敷いてあげたのに、ご主人様を偽物扱い。この飼い犬、一回、痛い目に遭わないとわからないのかなぁ。ね?梓♪」
とびきりの笑顔で、早口で、まくし立てた。
梓「あの・・・。ありがとうございました!」
梓は、飛び起きて、慌ただしく支度を、済ませて、外に出ていった。