Green Magic〜草食系ドクターの恋〜
「タローくん、明日、買い物に付き合ってくれない?」
加奈から昨日、電話があった。
特に予定もなかったので、「いいよ」と返事をした。
どうやら友達の結婚式で着る服を買いに行きたいようだ。
ドライブも兼ねて、少し離れたアウトレットモールに来た。
「タローくん、どんなのがいいと思う?」
どうせ、自分の中では決まっているのに、どうして聞くのだろう。
「これはどう?」
僕は選んだのは、光沢はあるけど派手すぎないピンクのワンピースだった。
デザインも背の高い加奈にも似合いそうだった。
「え~ピンク?ちょっと地味めなピンクだけど、やっぱり黒かな」
ほら、やっぱり決まってるじゃないか。しかも黒って。
おめでたい席なんだから、明るい色にしたらいいのに。
なんて言っても、「わかってないね~タローくん」なんて言われるに決まってる。だから言わない。
「これ、試着してくるね」
自分で決めたワンピースを手に取り、試着室に向かった。
彼女が着替える間、僕は試着室の前でスマホを触りながら待っていた。
「タローくん、どう?」
試着室から出てきた加奈は、黒のワンピースに身を包んでいた。
背も高く、スタイルも良いので、良く似合っている。
でも、きっとさっきのピンクの方が似合っていただろう。
「うん、良いと思うよ」
「じゃぁ、これにしよう」
まるで僕がこれが良いと言ったので決めたという口ぶりだ。
こんなことも日常茶飯事なので慣れっこだ。
そして、僕もわざわざこの関係を変えようとしない。