Green Magic〜草食系ドクターの恋〜
「へぁ、じゃあ、落ち着いた人なんだ?」
「まぁな」
「どこで知り合ったんだ?」
「姉ちゃんからの紹介」
「あずみさんからの?」
あずみさんとは、田村の3歳上のお姉さんのことで、僕も何度か会ったことがある。
薬剤師をしていて、大学病院でバリバリ働いている。
旦那さんは画家で、家でいることが多いので、家事や育児は任せっきりというのも聞いたことがある。
その旦那さんも売れない画家かと思いきや、海外で注目されているというのをテレビで観て驚いたのだ。
「あぁ、姉ちゃんの友達でさ・・・姉ちゃんの家に遊びに行った時に彼女も遊びに来てて・・・懐かしいな・・・って」
「懐かしい?」
「あぁ、俺が中学の時、よくうちに遊びに来てたからな」
田村は少し照れくさそうに鼻の頭を掻きながら話した。もしかして・・・。
「もしかして・・・その時から?」
田村の手が止まった。目も泳いでいる。
「さすが榊。相変わらず洞察力が鋭いな」
「ということは?」
「あぁ、ずっとってわけじゃないけどな」
田村の話によると、彼女と初めて出会ったのは、中二の頃。
彼女は高二。
周りの同級生の女子より、少し大人っぽい彼女に惹かれるには時間がかからなかったらしい。
しかし、思いは募るばかりで、想いを伝えることはできなかった。
その後、田村にも彼女ができたが、年下で子どもっぽい子ばかりを選んでいた。
年上は、どうしても彼女を重ねてしまうから避けていたそうだ。
「榊は?加奈ちゃんと続いてるんだろ?」
「あぁ、まあな」
「そろそろか?」
『そろそろ』とは結婚のことだろう。
「いや・・・」
やっぱり曖昧な返事しかできない。
「ははっ、榊は正直だな。まぁ、長いこと付き合っていたら、マンネリってこともあるよな」
マンネリか・・・そうなのか?
なんだかしっくりこないが「まぁな」と濁した。
それからは仕事の話ばかりしていた。
医局長が気分屋でやりにくいだとか、内部の人間にはなかなか話せないようなことも話した。
5年振りの再会は、有意義なものとなった。