素顔のキスは残業後に【番外編】第2話完結
大晦日の恋人達
「幸せになりたい。そう思った時に柏原(カシワバラ)さんの顔しか浮かばなかった――。こんな自分知らなかった。私、本当はすごく欲張りみたいです」
喉から搾りだす声に彼の瞳が微かに揺れる。
伝えたいと思った。ただ願うのではなくて、そばにいるだけで心から喜んで貰えるような存在になりたい。
そう強く願うことで変われる気がしたことを。
いつも意地悪に細まる瞳が照れたように細まるだけで。
ただそれだけで、胸が温かくなれたことを。
彼を好きになって気づくことが出来た沢山のことを――。
「柏原さんが好きです」
これは想いを深め合ったあの日から数日後の話。
< 1 / 49 >