素顔のキスは残業後に【番外編】第2話完結
肉付きがよくなった自分の体に小さくため息をつく。
すると、整髪料のついていないサラサラの黒髪と同じ色の瞳に気づかれてしまう。

「おはよ」


文庫本をサイドテーブルに置いた彼からそう告げられ、開きかけた口は、柔らかい唇に一瞬で奪われる。


突然高められた熱に驚き、薄く開いた唇。
それを逃すことなくするりと入り込まれ奥深くまで絡み合って。

まだ付き合いは浅いけど、私を知り尽くした指先が刺激を誘うように耳朶をなぞり出すと、自分じゃないような声が漏れそうになる。

彼の住む高級マンションは私のとは違い、隣に物音さえ聞こえない防音だとは思う。

けど、ね。ですけど、ね。
まだ朝なのに、いいんでしょうか、ね?
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