素顔のキスは残業後に【番外編】第2話完結
休日の意地悪な恋人
「おはよ」
薄目を開いた柏原さんが私を見つめる。
久々に同じ朝を迎えた幸せに自然と緩んだ唇に、そっと触れるだけのキスが落ちる。
一度触れると離れがたい唇は、熱い吐息を混じらせ深みを増していった。
時を戻す事、数分前――
柏原さんは今大きなプロジェクトを抱えていて、昨夜大阪出張から帰ったばかり。
手土産を片手に私のアパートに来てくれた彼は、シャワーを浴びてすぐ糸が切れた人形のように、パタッと眠りについてしまった。
微かな寝息を立てる柏原さんを起こさないように、ベッドから身を起こす。
微動だにしない彼を横目に見つめながら、ふと思った。
栢原さんが冗談を言う余裕もないだなんて、よっぽど疲れてるんだな。
出張中もちゃんと休めてなかったのかも……。