最初で最後の、恋だった。







「それなのに出ちゃって、望愛に怖い思いさせちゃったね」と先輩は笑う。




「…ねぇ望愛」

「…何ですか?」

「何でさっき、俺が発作出した時、出て行かなかったの?」

「え?」



何を言い出すの?先輩。



「望愛、俺のこと、怖いって思ったでしょ?
それなのに…何で…出て行かなかったの?
俺のこと何て見過ごして…出て行けば、望愛助かったよ?

俺がますます望愛を愛しちゃうのに」



あたしを愛する。

それは…“殺人を躊躇わない”と言うこと。




「俺の愛、歪んでいるでしょ?
望愛には、俺みたいな歪んだ愛じゃなくて、真っ直ぐな愛がお似合いだよ」



確かに、先輩の愛は歪んでいる。

さっきの先輩は…狂っていると思ったのも事実。

…でも……。



「…望愛のこと、放してあげる」

「え?」

「だからね…俺と、別れて?」



笑顔のまま、先輩は言う。






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