最初で最後の、恋だった。
「先輩…?何を言い出すんですか?」
「望愛、別れて」
「先輩っ…」
「望愛」
「先輩ッ!」
「望愛ッ!」
先輩は、あたしを睨む。
体が無意識のうちに震え始めた。
「…何でそんなこと…言うんですか…?
あたし…先輩が……」
「望愛もわかったでしょ?
俺が、望愛のお兄さんとか、山野雅とかを殺したの。
山野雅たちは自殺に見せかけて殺した。
望愛のお兄さんは通り魔に見せかけて殺した」
「嘘…嘘です。
先輩が、殺すはずありません」
「じゃあ、何で、俺の部屋に、血の付いたナイフがあるの?」
「それは…誰かを庇って…」
「俺は、そこまでお人好しじゃない。
いくら誰かを大事にしていても、殺人は庇えない。
望愛だけ。
望愛だけは…別だけど」
先輩の落ち着いてきた呼吸が、荒くなっていく。
このままじゃまた、先輩は発作を起こす。
「望愛には、俺の愛は受け止められない。
望愛のことは“ずっと”好きだけど、望愛が傷つく姿は、見たくない。
だから望愛…。
俺と……別れて…………?」
先輩は必死だ。
あたしを、歪んで狂って壊れた愛から守るために……。