最初で最後の、恋だった。






お父さんとお母さんはいない。

あたしが中2の頃、事故で亡くなった。

両親が生きていた頃は、誰からも羨ましがられる兄妹。

でも両親が亡くなった途端、お兄ちゃんは性格が変わった。



暴力を振るわれる。

話すのはまだ良い方。

時には、存在を消される。



廊下をすれ違う時だ。

あたしはお兄ちゃんが怖くて避けた。

そうしたらお兄ちゃんはいきなり、あたしのお腹を殴った。

くの字にして、あたしはしゃがみ込むと。

お兄ちゃんはそのまま、2階の自室へ向かった。

何も言わずに。



何か言われたのなら、改められる。

でも、何も言われず殴られるのだ。

何が悪いのか…わからない。



「お、兄ちゃ…ん……」

「…気安く呼ぶな」

「何で…あたしを…ッ殴るの?」



散々殴られ、ボロボロの体のまま、あたしは聞く。



「何で?
簡単な理由だよ。
…お前が邪魔だからだよ」



ガシッと足で蹴られる。

蹴られた位置は、丁度ソックスで見えない所。

…よく考えているな、と思う。







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