最初で最後の、恋だった。








先輩は、近づくあたしに気が付かないまま、胸元辺りまである柵の方へ歩いて行く。

あたしは立ち止まり、先輩を眺めた。



いつかの時のように澄み渡った青空を眺める先輩。

その目は、色を失っていた。

その佇まいは綺麗で…とても儚い。







触れれば…消えてしまいそうなほど……。






先輩…輝飛……。

あなたは今も、あたしのことが好きですか?

あたし…まだ何も知らないんです…。

輝飛の抱える闇も、あたしに告白した理由も。

だから…教えてください……。




居場所のなかったあたしに、輝飛は居場所をくれた。

あたしが初めて、生きていて良かったと思えたんだ。




輝飛はいつも優しくて。

その笑顔に、あたしは何度救われただろう?

お兄ちゃんや彼女に殴られ、蹴られて。

クラスの子からは存在を消されて。

生きている意味…あるのかなって、本気で思った。




あたしは、

輝飛がいるから、

―――生きて行けるんだ。






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