最初で最後の、恋だった。
ピーンポーン…
「チッ…誰だよ……。
邪魔しやがって…。
…お前、出ろよ。
オレはいないって言えよ」
お兄ちゃんが2階へ上がったことを確認し、あたしは立ち上がる。
殴られ蹴られた足が痛むけど、ソックスで全て傷は隠せた。
急いで鏡で顔をチェックすると、顔にはどこも傷がない。
そこだけ…お兄ちゃんには感謝している。
目元も、赤くなっていない。
泣いたって、ばれないはずだ。
あたしは急いで、玄関へ向かう。
今の時刻は6時。
帰ってきたのが3時。
…3時間も殴られていたんだ、あたし。
てか、こんな時間に誰だろう?
「どちら様ですか…?」
あたしは扉をゆっくり開けた。
そして訪問者を見て、行動が全て止まった。
「こんばんは」
「えっ…輝飛先輩……!?」
立っていたのは、まだ制服姿で、鞄を背負う輝飛先輩だった。