最初で最後の、恋だった。
★聖女(マリア)
クスクス笑いあい、あたしはふと聞いた。
「輝飛。
そろそろ教えてくれませんか?
…輝飛が、あたしを好きになった理由」
「…そうだね。
“その時”は来たようだし」
「輝飛の言う“その時”って、いつなんですか?」
「ん?
…俺が発作を起こして倒れた時」
「何でそれが、“その時”なんですか?」
「望愛。
俺はね、この恋にかけたんだ。
―――最初で最後の、恋にするつもりだったから」
最初で最後の、恋…?
「俺ね、前にも言ったけど、小さい頃から病気がちで、明日が見えない状況だったんだ。
本当、いつ死んでも可笑しくなかった。
覚えていないかな…?
俺ね、昔望愛と会ったことあるんだよ?」
え?
あたしと、輝飛が?
「随分昔の出来事だからね…。
俺が小学3年の頃だったから…。
今から…10年も前だね」
思いだすかのように、しみじみ話しだす輝飛。
あたしは、
忘れてしまった、
小さな出来事を思い出していた―――。