最初で最後の、恋だった。
「俺の小さい頃の記憶と言えば、薬のにおいと、白い部屋、白衣を着た医者と看護師だけ。
それ以外は…何もなかった。
両親は、いつも俺を、励ましてくれた。
必ず治るよ、とか
治ったら学校行こう、とか。
その励ましに、俺は何度も救われた。
でも、両親は来なくなったんだ。
何日経っても、何か月経っても、何年間経っても。
…俺は捨てられたんだよ」
初めて知った、先輩の家庭事情。
ご両親を見かけないなとは思っていたけど、まさかそんな哀しいことがあったなんて。
「今では望愛のことを信じられるけど、出会ったばかりの頃は信じられなかった。
また、あの両親のように、俺を捨てるのかなって想像するだけで、俺は望愛を離したくなくなった。
監禁してでも…誰かに傍にいてほしいって思っていたんだ。
両親は、俺にかかる莫大な治療費を見て、嫌気が差したんだ。
両親はかなりエリートを呼ばれる仕事をしていて、無駄にお金はあった。
でも、治る見込みのない俺なんかのために、お金を使えるかって。
…ドブに捨てているようなものだったから。
両親は俺に一生楽して過ごせるぐらいのお金を置いて逃げた。
医者にも予め渡していたみたいだから、それでその時治療した。
でも俺は、お金なんかより、両親に傍にいてほしかった。
例え嘘まみれの励ましでも、俺は救われたから」
信じていたはずの両親に捨てられた。
それは、小さかった輝飛の人生を、大きく変えたんだ。
「丁度その時、俺は小3だった。
両親が行方をくらまして数日後、俺の病気は悪化した。
発作起こして、収まったらまた発作起こして。
その繰り返しだった。
朝目覚める度に思っていた。
…何で俺、生きているんだろうって。
両親はいないし、医者や看護師は嘘まみれの言葉しかくれないし、発作とか薬の副作用で気持ち悪くなったり、凄く最悪だった。
生きている意味が、わからなかった」