最初で最後の、恋だった。






そこは、今あたしたちが通う高校の屋上。

当時そこに、お兄ちゃんがいたんだ。

お兄ちゃんはまだ小学生で、高校には通えない。

でも、高校のグラウンドで行われている、野球の試合を、あたしは見に来ていたんだ。



ただ、あたしは野球なんて詳しくないから。

暇になったあたしは、初めて来る高校を探検していたんだ。

そこで、屋上に来た。



屋上には、今にも死にそうなほど苦しんでいる男の子がいた。

あたしはわけのわからぬまま駆け寄り、声をかけたんだ。

男の子は凄くカッコいいけど、何故かどこか寂しそうで。

―――放っておくことが、出来なかったんだ。






「望愛に声かけられて、不思議と発作は収まった」




落ち着いた男の子は、あたしを見て言ったんだ。




『死にたいって思った時、ある?』って。




あたしは驚いた。

自分と変わらぬ背丈の男の子が、まさかそんなこと言うなんて。


でも当時のあたしは死とかそういうのわからなくて。

ただ普通に、自分の思ったことを述べたんだ。







『んーとねー。
よくあたしはわからないけどー。

あたしは、今幸せだよ。
キミは、幸せじゃないの?

なら、あたしと友達になろ。
あたし、のあ。
みのや のあだよ。

よろしくねっ!』







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