最初で最後の、恋だった。







「俺は中学になって臓器提供者が現れて移植したから、少しは安定してきた。
でも時々発作は来るし、免疫力はないから、学校には行けなかった。

でも俺は勉強を頑張った。
遅れた分を取り戻して、望愛と出会ったあの高校に入るため。
お蔭で出席日数は足りなかったけど、勉強の特待生として入ることが出来たんだ。

全ては、望愛に出会うためだったんだ」




輝飛…ッ。

あんなに哀しいことがあったのに、あたしを、愛してくれた。





「高校に入って、木の影から俺を見守る、望愛に出会った。
でも、望愛はあの頃の雰囲気とは違くて…。

俺は不審に思って、望愛に近づいた。
そうしたら、まさかあの時笑顔で駆け寄って行ったお兄さんに、暴力を受けていたなんて、想像もしていなかったよ。

望愛を変えたのは、あのお兄さん。
聖女(マリア)に純粋に憧れていた望愛を消したのはお兄さん。
望愛を泣かせ、傷つけるのもお兄さん。

俺…どうしても許せなかった。
だから…殺した。


山野雅たちもそう。
望愛はお兄さんに傷つけられているって言うのに、ますます望愛を傷つける。
望愛を泣かせる奴は…許せなかったんだ」




輝飛…。




「ありがとう輝飛。
あたしのために…ッ」

「泣かないで望愛。
俺は望愛が居てくれれば良い。
望愛しかいらない、望愛しか欲しくない。
…望愛が、俺の聖女(マリア)だよ………」

「あたしも…。
輝飛だけの…聖女(マリア)になりたい……」




あたしたちはそっと、キスを交わした。






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