最初で最後の、恋だった。
涙の止まらなくなったあたしを、先輩は優しく抱きしめてくれた。
「先輩…」
「望愛ちゃん…」
先輩の抱きしめ方が優しくて。
先輩の体温にほっとして。
…あたしの涙は、止まることを知らない。
「そういえば先輩。
1つ…聞いても良いですか?」
「何?」
「どうして…あたしなんですか?」
先輩と付き合えることは、凄く嬉しい。
でもその代わり、疑問が残る。
何で誰からも愛される先輩が、あたしを好きになったんだろう?
あたしなんて、影から先輩を見ているだけ。
目立たなくて、取り柄なんてなくて。
何もかも器用にこなす、完璧な先輩とは大違いだ。
「…さぁ、何でだろうね?」
何故か先輩ははぐらかした。
口元には、綺麗な笑みを浮かべていた。