最初で最後の、恋だった。







「ど、どうしてですか輝飛先輩!
教えてくださいよ」

「アハハ、可愛い望愛ちゃん。
でも内緒。教えてあげないよー」




悪戯っ子みたいな先輩。

先輩から告白されなければ、見られなかった光景だ。





「教えてくださいよー」

「うーん…そうだなぁ……。
…いつか、いつか“その時”が来たら教えてあげるよ」

「“その時”っていつですか?」

「うーん…いつだろうねぇ」



どこまでも続く、広い青空を眺めながら、先輩は言う。

あたしもそれ以上は聞かなかった。

「じゃあ、“その時”が来たら、必ず教えてくださいね」とだけ言った。

先輩も「約束」と言ってくれた。

何故かその笑みは…とても哀しそうに見えた。




“その時”がいつなのか、知るのは先になる。






―――この時のあたしは、“その時”が知りたくてたまらなかった。

でも先輩は、“その時”なんて来たくないと思っていたんだ。

その理由を知るのは、先の話。





先輩の言う“その時”が、まさか“あの時”になるなんて。

あたしは疑いもしなかったんだ。







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