最初で最後の、恋だった。
★初デート
☆☆☆
今日は先輩と付き合い始めて、初めての土曜日。
お兄ちゃんは大学の講義の後、バイト。
あたしは1人で部屋にいた。
することなんてなくて、ただスマホを眺めていた。
友達のいないあたしにスマホなんてものはいらなかったけど。
お兄ちゃんのホスト仲間の一言で、お兄ちゃんが買ってくれた。
「え?
タツマの妹、スマホ持ってねーの?
女の子は夜とか危険だから、持たせてやれよ。
意地悪な兄貴だなー」
“意地悪な兄貴”と言われたのが気にくわなかったらしいお兄ちゃんは、次の日あたしに携帯電話会社のロゴが入った紙袋を渡してきた。
その中に入っていたのが、このスマホ。
お兄ちゃんが勝手に選んできた、白いシンプルなスマホ。
通話代やメール代、ネット代は全てお兄ちゃんが払うみたいだから、むやみに使うなと念を押された。
電話代などを払うことが、“優しい兄貴”の印象へ繋がるみたいだ。
ちなみにタツマとは、お兄ちゃんのバイトでの源氏名である。
お兄ちゃんの連絡先は一応登録されているものの、連絡をするのは禁止されている。
邪魔になるからって、スマホを渡された時に言われた。
「何で妹のスマホにタツマの連絡先書かれてねーの?」とホスト仲間に言われるんじゃないかとお兄ちゃんは勝手に被害妄想したから。
形だけの、連絡交換。
何でホスト仲間が、あたしのスマホを覗くと思うんだか。
…わけわからないお兄ちゃんだ。