最初で最後の、恋だった。
「そういえば望愛ちゃん。
安心して」
「何がですか?」
「俺、望愛ちゃんが傷つくようなことはしないから」
「…どういう意味ですか?」
「ん?
もし学校の誰かと会ったら、望愛ちゃん何かされるでしょ?
恋する女って、怖いからさ」
先輩…
「エスパーですか?」
何であたしの思っていること…。
「エスパーじゃないよ。
望愛ちゃん、笑顔だけど、少し不安そうだから。
俺みたいなのと付き合うと、何かされちゃうでしょ?」
「先輩は、自分がモテるのを自覚しているんですか?」
「していないけどねー…。
春馬がモテるの羨ましいーとかしつこいから。
そう言われ続けると、自覚みたいなの、出てきちゃうんだよね」
そうなんだ…。
「ねぇ望愛ちゃん。
木の葉を隠すなら、望愛ちゃんどこに隠す?」
「え?…森の中?」
「正解。
なら、人を隠すなら?」
「…人混み?」
「そ。
つまり今から俺らは、人混みに行きます。
…はぐれないよう、手しっかり握っておいてね」
「…はい!」
ギュッと、あたしたちは手を握った。