最初で最後の、恋だった。
あたしが楽しそうな輝飛先輩を眺めていると、先輩は話し出した。
「俺さ、前にも言ったと思うけど、たまに1人になりたい時があって。
でも学校内では屋上でしか1人きりになれないんだ。
屋上が開いているの知っているのは俺だけだし。
まさか開いていないと思われている屋上に、俺がいるなんて女子も思わないからね。
屋上以外は全部駄目。
静かな図書室だろうが、ホルマリン漬けの蛙がある理科室だろうが関係ない。
俺がいる所なら、どこへでも女子はくっついてくる。
…まるでストーカーだよ。
そんな時このお店見つけてね。
誰もいない店内の雰囲気が、気に入って。
…俺が求めていた場所だって思って、通うようになった。
屋上にいること、春馬は知っているんだ。
でも春馬は俺の理由を知っているから、屋上には来ない。
でもこの喫茶店のこと、春馬は知らない」
え?
「じゃあ何であたしを?」
「望愛ちゃんは…俺の大事な人だから。
望愛ちゃんだけには…知っていてほしいんだ」
屋上にいることを知る奥田先輩も知らない、輝飛先輩の場所。
それを知っているのは…あたしだけ。
「だからね望愛ちゃん、この喫茶店…誰にも教えちゃ駄目。
俺ら2人だけの…秘密の場所にしよ?」
甘えたような瞳を向けてくる先輩。
「勿論です…。
先輩の大事な場所…誰にも言いません…。
あたしたちだけの…秘密の場所ですから…。
誰にも…邪魔はさせません……」
あたしたちはそこで、
初めてのキスを交わした。