最初で最後の、恋だった。






リビングのソファーに横たわる、お兄ちゃんと知らない女の人。

2人とも…洋服を着ていない。




「…望愛」



“妹思いの優しい兄”を人前では演じるお兄ちゃん。

演じるときだけ…名前を呼ぶ。




「帰っていたのか、望愛」

「うん…ただいま」

「アレー妹さん?」



派手な服で上半身を隠す女の人と、隠さないお兄ちゃん。

目のやり場に…凄く困る……。



あたしはお辞儀をして、おかずの本を手に取る。




「望愛」



部屋に行こうとして、止められた。

振り向くと、気持ち悪いぐらい微笑むお兄ちゃんがいた。




「今日、友達の家で晩ご飯食べるんだろ?」

「え?」



そんなこと…一言も言っていない。

第一あたしに、晩ご飯を一緒に食べる友達などいない。






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