最初で最後の、恋だった。






「望愛ちゃん。
今日アタシ、この家泊まるわね。
だから…出て行ってくれない?」



いきなり現れた王女は、王と同じで、あたしを散々殴り、蹴った。

いつもは王1人だけど、今日は2人がかり。

…痛まないわけがなかった。





その上、王女はあたしに「出て行け」と言った。

王よりも…ヒドい……。




「来いよ」



王に髪を引っ張られ、あたしは玄関まで引きずられた。

そして靴も履かせてくれぬまま、あたしを夜の街に放り出した。




「帰ってこなくて良いから」

「バイバイ、可哀想な望愛ちゃん?」



王の腕に王女は自分の腕を絡ませ、お城の扉をバタンッと閉め出される。




お伽噺の家来だって…こんなひどい仕打ち受けない。

受けるのは…家来以下の…奴隷……?



あたしって、家来じゃないんだ。

あたしは…奴隷なんだ。

王と王女のストレス発散道具のため生かされている、奴隷なんだ…。



あたしは、いつもより痛む裸足に力を入れ、立ち上がった。

胸元には、おかずの本。

リビングから引っ張り出される寸前、腕を精一杯伸ばして、掴んだんだ。






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