最初で最後の、恋だった。
「先輩…何でっ……」
「聞きたいのは俺の方」
先輩は傘をあたしに傾けたまま、しゃがみ込んだ。
「こんな所で、こんな時間に何しているの?
しかも裸足だし…何かあったの?」
「………」
あたしは無言で泣きだした。
先輩に出会い、枯れたはずの涙が、蘇ったみたいだ。
「…家に帰らないの?
てか鞄ない所を見ると…。
家には1度帰ったものの、出てきたの?」
あたしは無言で頷いた。
「帰らないの?」
「…帰れない……」
小さく、聞こえないぐらい小さな声で、あたしは呟いた。
「…俺の家、来る?」
「え?」
先輩の申し出に、驚いて顔を上げた。
「俺の家、ここから近いし。
帰れないのなら、俺の家おいで。
何もしないから…安心して?」
…状況が読めなかった。