最初で最後の、恋だった。
「でも…迷惑じゃ……」
「望愛ちゃんなら、いつでも大歓迎するよ」
「ご両親は…」
「…俺の家、仕事で遅いから」
「遠慮せずにおいで」と先輩はあたしを誘う。
あたしが黙っていると、先輩は傘の柄を差し出してきた。
「え?」
「持って」
「え?」
「良いから」
半ば強引に持たされる感じで、あたしは傘の柄を持つ。
あたしに柄を持たせた先輩は、くるりと後ろを向いた。
「先輩…?」
「乗って」
「え?」
「乗って。
足怪我しているの、知っているから。
痛いからベンチ座っていたんでしょ?
俺の家までおぶってあげるから、乗って」
先輩の広い背中が、目の前にある。
躊躇っていると、先輩が再び催促をする。
あたしは恐る恐る…首に手を回し、体重をかけた。
「重いですよ…?」
「ううん、全く重くない。
逆に軽すぎる。
望愛ちゃん、ちゃんとご飯食べてる?」
朝ご飯と夕ご飯は…あんまり食べないかも。
お兄ちゃんがいつ起きて、いつ帰るかわからないから。
ビクビクしながらのご飯なんて、味がしないもん。
だから、少なめだ。