最初で最後の、恋だった。







「さすがに傘は持てないから。
望愛ちゃん濡れないようにね」



あたしをおぶったまま、先輩は立ち上がる。

先輩は背が高いから…凄く眺めが良い。

小さい頃、お父さんに肩車された日のことを思い出した。



先輩は歩きだす。

一定のリズムを刻みながら、進んでいく。




「先輩。
何でこんな時間にいたんですか?」



時間なんてわからないけど、きっと遅いだろう。

帰ってきた時刻が、4時。

それなのに、とっぷり日が暮れているもん。

その上、先輩もさっき驚いたように、「こんな時間」と言っていた。

遅いんだろう…。




「俺?
俺は散歩」




こんな雨の中?





「俺、雨好きなんだよね…。
雨の日はこうして、たまに散歩している。
そうしたら、公園に人がいるのが見えて。
近づいてみたら…望愛ちゃんだった」




先輩…

ヒーローみたいですね。






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