最初で最後の、恋だった。







大きくて立派な噴水を回るように歩き、先輩は大きな扉の前で止まる。

そして器用に片手であたしを支えたまま、インターフォンらしきものを押す。



「これ、指紋認証システムが導入されているから。
望愛ちゃんが押したら、警報なっちゃうんだ」



凄い防犯システム…。



「お帰りなさいませ、ぼっちゃま」



出てきたのは、メイド服を着た、おばさん。

正直メイドってイメージは…ないな。



「どこに行って来たんですか?」

「ん?
散歩だよ散歩。
それより、包帯とあったかいタオル、持ってきて」

「かしこまりました」



おばさんは頭を下げ、奥へ向かう。

あたしも先輩に背負われたまま、中へ入る。



「…!?」



まさにそこは、お城だった。



高級そうな石が敷き詰められた、玄関。

目の前には、高そうな螺旋階段。

壁も床も白で統一されていて、高級感漂う雰囲気だ。

高い天井に吊り下げられているシャンデリアは、綺麗だ。



ドラマでしか見たことのない光景が、

そこには広がっていた。







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