最初で最後の、恋だった。







「どうぞぼっちゃま」

「ありがと。
そのぼっちゃまって言うの、良い加減止めない?」

「………」

「…。まぁ良いや」



簡単な会話を済ませた先輩とメイドさん。

メイドさんは頭を下げると、どこかへ引っ込んでしまった。



「望愛ちゃん、座って」



玄関の所に座ったあたし。

先輩はあたしの足を優しく掴むと、温められたタオルで拭き始めた。




「先輩っ!?」

「…望愛ちゃん」

「!?」




…見られた。

お兄ちゃんや女の人に殴られた…足の痣が……。

赤黒く変色していて、見れたものじゃない。




「………」



先輩は拭き終わると、グルグルあたしに包帯を巻き始めた。

無言だけど、その表情は、哀しみに溢れていた。



何でそんな表情、

先輩がするんですか…?






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