最初で最後の、恋だった。





「望愛ちゃん」


あたしをお姫様抱っこした先輩。



「先輩っ…」

「暴れないで。落ちちゃう」

「…ッ」



先輩はあたしを抱きかかえたまま、螺旋階段を上がって行く。



「…」

「望愛ちゃん」

「ひゃいっ」



緊張して、変な声が出てしまった。

…恥ずかしい……。



「俺変なことはしないから。
何度も言うけど、望愛ちゃんが傷つくことはしない。
俺がするのは、望愛ちゃんが喜ぶことだけ」



先輩の言葉は、不思議だ。

信じても良いかなと思える。




「どこ…行くんですか?」

「俺の部屋」



螺旋階段を上がり切ると、そこには1つだけ扉があった。



「何もないけど、入って」



先輩の部屋は、シンプルだった。

ベッド・本棚・勉強机以外、何もない…。






< 61 / 157 >

この作品をシェア

pagetop