最初で最後の、恋だった。






先輩はあたしを、ベッドの上に乗せた。

アスファルトとは違う、優しい布団の柔らかさ。

泣きそうになって、涙をこらえた。




「何か飲み物でも飲む?
あと、夕ご飯食べた?」

「ま、まだです…」

「俺もまだだからさ。
一緒に食べない?」

「…良いんですか?」

「遠慮しないで。
あ、アレルギーとか嫌いなものとかある?」

「ないです」

「偉いね。
じゃ、ちょっと持ってくるから、テキトーに本でも読んでて」




先輩が出て行き、改めてホッとする。

外ではまだ雨は降り続いているみたいで、ピチャピチャ音がする。




先輩があの時通らなかったら…。

あたしは…死んでいたのだろうか?

あたしは…生きていたのだろうか?




全て全て…先輩のお蔭……。

先輩があたしを見つけてくれたから…。

あたしは今…生きて行ける。




先輩…

ありがとうございます……。





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