最初で最後の、恋だった。






「見てよ。
あの地味子、また掃除しているわ」

「ウケる」

「地味子は掃除するしか取り柄ないものねー」

「地味子っつーか、幽霊じゃねアレは」

「それ言えてるー」



…慣れてる。

地味子と言われるのも、幽霊と言われるのも。

全て…この長い前髪のせいだ。



でもあたしは。

この前髪を切ることは出来ない。

切ったら…何言われるかわからない。

何されるかわからない。




「………」



黙々と掃除をしているうちに、誰も教室にいなくなった。

残されたのは、幽霊みたいに立ちつくすあたしと、あたしの鞄だけ。

あたしの鞄は、何故か埃だらけ。

落ちたにしても、あんなに埃が被るわけない。

…誰かが、意図的にあたしの鞄に埃を乗せたんだ。




こんな些細な嫌がらせはあっても、直接的に何かされたわけじゃない。

しかも、地味子や幽霊などと言われているあたしだから。

こんなことされているのは…慣れている。

今に始まったことじゃない。






< 7 / 157 >

この作品をシェア

pagetop