最初で最後の、恋だった。
「見てよ。
あの地味子、また掃除しているわ」
「ウケる」
「地味子は掃除するしか取り柄ないものねー」
「地味子っつーか、幽霊じゃねアレは」
「それ言えてるー」
…慣れてる。
地味子と言われるのも、幽霊と言われるのも。
全て…この長い前髪のせいだ。
でもあたしは。
この前髪を切ることは出来ない。
切ったら…何言われるかわからない。
何されるかわからない。
「………」
黙々と掃除をしているうちに、誰も教室にいなくなった。
残されたのは、幽霊みたいに立ちつくすあたしと、あたしの鞄だけ。
あたしの鞄は、何故か埃だらけ。
落ちたにしても、あんなに埃が被るわけない。
…誰かが、意図的にあたしの鞄に埃を乗せたんだ。
こんな些細な嫌がらせはあっても、直接的に何かされたわけじゃない。
しかも、地味子や幽霊などと言われているあたしだから。
こんなことされているのは…慣れている。
今に始まったことじゃない。