最初で最後の、恋だった。
今日は殆ど上の空で聞いていた授業を、真面目に聞いた。
先輩はあんなに沢山、ノートが真っ黒になるまで勉強しているんだ。
あたしも頑張って勉強しなくちゃいけない。
「三ノ矢、答えてみろ」
「は、はい」
先生に当てられ、黒板の前に立ち、チョークで答えを書いて行く。
「正解だ」
ヤッタ!
赤点取りまくっている数学なのに!
頑張って授業を聞いた甲斐があったな。
先生も驚いていた。
「三ノ矢さん」
休み時間。
数学の授業の復習をしていると、クラスの子が来た。
…うちのクラスで最も苦手だと思っていた女子だった。
確か名前は…
山野雅(みやび)。
輝飛先輩と同じ名字のお蔭で、先輩のファンクラブ会長をしているとか。
「な、何でしょうか…?」
「来て」
駄目…行っちゃ駄目……。
けど、行かないと…駄目だ……。