最初で最後の、恋だった。
「…そうだったんだ」
先輩はあたしの話を、聞いてくれた。
あたしがお兄ちゃんに殴られ蹴られていたこと。
お兄ちゃんの彼女が来てからと言うもの、その人にも殴られ蹴られていたこと。
「その長い前髪も…そう?」
「うん…。
お兄ちゃんね、あたしに言ったんです…。
あたしの…顔が嫌いだから…隠せって。
だから…伸ばしたんです……」
「勿体ないね…。
望愛ちゃん、凄く可愛い顔しているんだから。
隠すなんて…凄く勿体ない気がするよ……」
あたしが…可愛い顔している?
「あたしが可愛いなんて、気のせいです…」
性格は最悪でも、山野雅の方が可愛いし、美人だ。
あたしなんて…可愛くもないし美人でもない。
「俺は望愛ちゃんが世界で1番可愛いと思うよ。
誰かが望愛ちゃんをブスって言っても、俺は否定する」
何でだろ…。
凄く…安心できる……。
先輩の言葉には、魔法がかけられているみたいだ。
しかも、先輩はかっこいいから。
そんなキザな台詞がとても似合う。