どうしてもママ、子供のまま。
………ジュワッ。
「熱っ!」
ぼんやりする耳に聞こえてきたのは、朝から騒ぐような叫び声。
声の主は、なにやらキッチン…?から聞こえてくる。
ぼーっとする目をこすって、体を起こした。
ベッドを見ると、私の横には、いつも居るはずの彼は居なかった。
起きるの早いなぁ…
私は体を起こして、枕元にあったティッシュを2,3枚とって鼻をかんだ。
寝起きよりスッキリした鼻呼吸になんだか新鮮感を覚える。
私の鼻水をまとめて吸い取ったティッシュを丸めて、部屋の角のゴミ箱に向かって投げる。
と、見事命中した。
…が、何か違和感。
『ん!?』
鼻で何度も呼吸してあたりの嗅覚を確認する。
ん、ん、なんだか…焦げ臭い…
キッチンでなにかあったんだろうか。
私はベッドサイドに揃えて並んであったスリッパを急かして履いてキッチンに向かった。
『佑!?』
「お!起きたのかよ。オハヨーぐらい言えねーのか?」
不機嫌そうにフライパンを持ってキッチンに突っ立っていたのは、佑。
焦げ臭い匂いの発信地は、どこでもないココだった。
『私がやるよ!やけど…とかしてないよね?』
「ん、いや、そこまで不器用じゃねーから」
フライパンをもっている佑はなんだか新鮮すぎた。
あたりには、卵の殻とか、使用済みのスプーンとかが散乱している。
泥棒でも入ったの………?なーんて思うレベル…
『わたし作るよ?』
「いやいい。おれが作る」
『なんで急に…?』
恐る恐る聞いてみると、佑からは意外すぎる言葉が返ってきた。
「いっつもおまえ朝早くから作ってくれてんだろ。たまには…恩返しっつーか…暇だったんだよっ」
初めて、佑がこんなこと言った。
佑…そんなこと思ってたの?
…フライパンのうえで見事に焦げて変な匂いを醸し出している物体よりも熱そうに赤面する佑。
朝っぱらから…愛しいよ。
『佑…ありがと』
「うるせぇ、支度しろ」
佑はフライパンに目を戻して、私の分の弁当と佑の分の弁当に黒い物体(?)を盛り付けている。
私は無口で隣に立つ。
そして、散乱したスプーンやら皿やらを洗う。
「準備しねーと遅刻するぞ?」
『夫婦は協力するもんでしょ』
そう言って私は、佑の顔を見る。
佑はポカンと口を開けていた。
佑が作って、私が洗う。
なんだかいろいろ間違ってる気がするけど…
朝から、大騒ぎで、だけど楽しかった。