どうしてもママ、子供のまま。
「佑も、朱美も…元気でね…」
涙腺崩壊とでも言うかの量の涙を流す、愛菜。
「佑くん…朱美をよろしくね」
涙の代わりに鼻水を大量にすすっている絵里。
「お前、朱美ちゃん可愛いからってあんまりイジメんなよ!」
鼻を少しすすって、腫れた目で佑に笑うのは、佑の友達、圭くん。
「なんかあったら電話してよ。ケー番とか変えるつもりねーからさ」
男泣き、とでも言うのか。涙を溜めに溜めた目で話すのは、佑の親友の…康太くん。
その他にも、だいすきな後輩とか、少ないけど、先輩とか…同級生は、みんなお出迎えしてくれた。
『みんな…ありがと』
「おれたち二人でこれからも頑張っていくよ」
今日が最後の制服。
私と佑は、だいすきな友達を後ろに、校舎を後にした。
高校卒業の手続きを済ましおえた私たちは、そのまま近くの市役所へ向かう。
「あのー、すいません、一枚…ください」
佑が、カウンターに向かって照れ臭そうに話しかけた。
なにやら理解をした市役所の担当員は、一枚の紙を佑に差し出す。
佑はそれを受け取ると、照れながら、入り口付近にいる私の方へと駆け寄った。
持ってきたのは……婚姻届。
私は少し照れくさかった。
「式は…また近々あげよう。今…2月だろ?あと2ヶ月したら、おれも18歳だし、籍入れられるから」
佑は、学年でトップの早生まれだ。
4月2日。
だから、進級してすぐに歳を迎える。
もう、私達二人に、〝進級″なんて言葉はないけど。
紙だけを受け取ると、そのまま私たちは寄り添って市役所を出た。
婚姻届…二ヶ月後、出しにきます。
二ヶ月後の四月は、DNA検査を受けられる月でもあるし、籍を入れられる月でもある。
それまでにお互い職を安定させないとね。
ふたりなら、大丈夫。