どうしてもママ、子供のまま。
家について、さっき市役所からもらってきた婚姻届を大事に棚にしまう。
私たちは、来週から務める勤務先と電話をしていた。
佑は、普通のサラリーマン。
正直、よくなれたな、って思った。
最低今は最終学歴は高卒。
だけど運良く、面接に行った会社に、佑のお父さんの知り合いが働いているらしくて。
その人のおかげで、なんとか佑はサラリーマンになれたってわけ。
本当は本人が、バスの運転手とか、運送会社とかを希望してたんだけど…わたしがダメっていった。
だって…不安だもん。
事故にあったらどうするの?
ガミガミ言ってるうちに、佑も志望職を変更した。
私は、コールセンター。
移動費負担だし、なにより、体を使わないから、お腹にいる赤ちゃんにとっても有利かな…なんて。
私自体誰かのクレームを受けたりするの、すごく苦手なんだけど…
コールセンターにしては高収入だったし…即決。
こうして、お互いの勤務先決定。
いろいろ難しかったけど、第一の壁クリアって感じかな。
これからも、いろいろ試練はあると思うけど…乗り越えていこうね、佑。
佑が勤務先との電話を終え、ドアの取っ手にかけてあったハンガーをみる。
そのハンガーには、新しいスーツがかかっていた。
それは…明日着て行くためのもの。
「おれ、似合うかな」
ぽそ、ッと佑はつぶやいた。
私は寄り添って、少し惚気て見せた。
『佑ならきっと似合うよ。頑張ってね…明日から』
「朱美…うん、頑張るよ」
私の目を見て固く誓った、〝頑張る″の四文字。
それ、そっくりそのまま返すから。
私も頑張るよ。
誓いと、愛と、寂しさを埋めるための、微かに触れるか触れないかくらいのキス。
私の肩に添えた佑の手のひらが、あったかい。
ここ最近、佑は私の体をとても気遣うようになってくれた。
『佑…だいすき』
「おれもだいす…あー」
おれもだいすき……って、言いたかったのかな?
聞きたかったなぁ。
私が、〝もう一回キスして″の合図で、唇を差し出して目を瞑る。
すると、佑は押し殺すような声で言った。
「んぁー、もう!本当は今すぐ押し倒して…愛したいのにっ」
そう言うと、佑は強引にキスをしてきた。
ごめんね、少しの間、我慢しててね。
私はそっと、佑の背中に手を回した。