どうしてもママ、子供のまま。
ママの味
『というわけでね、今週の土曜日にこのみさんの家でお料理をするの!』
「するっつっても、教えてもらうだけだろーが」
ここは家。
お互い仕事が終わって、たまたま各自乗った電車が一緒で。
そこから一緒に帰ってきた。
一緒に帰ったのなんて、高校生活以来だね。
なんだか懐かしかったし…反対に、もう滅多にこういう事がなくなっちゃうんだって、寂しくもなった。
「んーでも俺、お前の下手くそな料理何気好きだけどなー」
コーヒーの表面に角砂糖を浸して話す佑。
角砂糖は、一気に全体をコーヒー色に染めた。
『下手くそって…そう言ってる時点であんまり気に入ってないじゃん』
「いや?ママの味って感じで。おれは好きだけどー」
…っぶんな。
急すぎて、どきっとした。
ママ…かぁ。
私、もうママなんだね…
『もー佑、だいすきっ!』
佑の腕にとびきりしがみつくと、佑の持っていたコーヒーカップの中で、コーヒーが揺れた。