どうしてもママ、子供のまま。
重い足取りで、私たちは個々に家を出た。
佑は会社。私は……病院。
お腹を撫でる。
まだ、命を持っている、っていう実感はない。
けどあるんだね。
きみは……誰の子?
昨日まできっと佑の子だって思ってた自信はどこに行ったんだろう。
今じゃ、あの痴漢魔の子じゃないかって…不安で仕方ない。
痴漢魔との子だったら…どうする?
そしたら私、命張ってあなたを守れる?
そんな自信ないよ…
わたしは、お腹をさすりながら考えた。
気づけば、病院についていた。
私………怖い。
待ち時間、ずっと考えてた。
お腹にかすかな命。
どんなに顔がかわいくなくたっていいよ。
どんなにわがままな子でもいいよ。
女の子じゃなくてもいいよ。
だからお願い…
佑との子でいて…
「番号2番の方、診察室にお入りください」
純白のナース服をきた茶髪のお姉さんが奥で言った。
私が手に持つ発行券。
番号は2番だった。
コチラです、と指定された診察室に入る。
くるりと振り返ったお医者さんは女医さん。
『あ!』
「どーも」
堺先生…前私が倒れた時の…!
「それより、そこの椅子に腰掛けて」
『…はい』
目の前にあった椅子に腰掛ける。
ふぅ、とため息をついた堺先生。
そのあと、眼鏡をかけ直して言った。
「旦那さんと痴漢魔、どっちが先だったっけ?」
『…痴漢魔です』
「そう………」
落ち着いて聞いてね、と、堺先生は言った。
私は唾を飲んだ。
「痴漢魔との子の可能性が高いわ」
まあまず、DNA検査しておきましょう、と堺先生は言う。
全てを知るのは、10日後だった。