どうしてもママ、子供のまま。
『このみさんおめでとー!』
「きゃあ、ありがとう朱美ちゃん」
白いウェディングドレス姿のこのみさんは、いつもよりとても綺麗。
モカブラウンの髪色が、このみさんの優しい雰囲気を表現している。
落ち着きすぎない赤いリップも、ちょっと色気のあるアップヘアーも、いつもと違う可愛さがあった。
完全に、幸せというベールに包まれていた。
「でもまさか私の姿を見て、朱美ちゃんが泣いてくれるなんて思わなかったわ」
クスス、と笑いながら、このみさんは私にハンカチを差し出してくれた。
私はそのハンカチを受け取って、鼻をかむ。
隣で、佑が笑った。
「こいつ泣き虫なんだよ、許してやって」
「もちろんよ、怒る気なんてないわ。でも、私の旦那よりもオーバーリアクションだと思う」
佑とこのみさんは、久しぶりの再会。
このみさんは少し目が潤んでいたけど、幸せそうな顔で笑っていた。
佑が私を抱えながら、このみさんと話す。
「あれ、まだ旦那さんにその姿見せてねえの?」
「うん、まだ。今着替えてるっぽいの」
「おっせーな」
「マイペースなのよねぇ」
はぁ…とため息をつきながら、このみさんと佑は笑った。
ちょっと……私を置いて二人でいいムードにならないでよ。
佑の親族であるこのみさんにまでヤキモチを妬くようになってしまった私。
この辺な焼きグセなんとかしなきゃ。
ハンカチで目をこすっていると、頭に手を置かれた。
『なっ』
「そろそろ泣き止んだか?ボケ」
ニヤっと笑いながら、佑が私の顔を覗いた。
『は!?ボケなんかじゃありません!』
むかついて佑に攻撃する私。
それに対抗している佑。
そんな私たちを見て、密かにこのみさんが微笑んでいたのを、私はきっと横目で見ていた。
ーーーーーーーガチャ。
『「「?」」』
三人が、音のする方に注目する。
音を発した場所は…どうやら扉のようだ。
みると…
「あら!高志!」
白いタキシード姿の、このみさんの彼氏…いや、旦那さんだった。
このみさんは、長いウェディングドレスを引きずって歩き寄る。
高志さんは、そんなこのみさんのウェディングドレス姿をみて、ポカンと口を開けていた。
「……だよ」
「え?」
高志さんが、ボソッとつぶやいた。
そして、俯いた。
「え?どしたの?」
このみさんが近くに寄って、高志さんの顔を覗く。
そんな二人を、私たちは静止して眺めていた。
高志さんの顔を覗いたこのみさんが、少し驚いた後に、目を潤ませた。
「もう…馬鹿ね」
そういって、このみさんは高志さんの顔を拭いた。
顔をあげた高志さんは……泣いていたのだ。
「綺麗だ…このみ……綺麗だよ」
そういって、高志さんはこのみさんを抱きしめた。
そんな高志さんを、馬鹿じゃないのと泣きながら叩くのはこのみさん。
………幸せそうだなぁ。
「このみ、俺の嫁になってくれて、ありがとう」
「うん……ばかぁ」
このみさんが、頷いた後に言った、「馬鹿」って言葉。
それをきいても、高志さんは笑ってこのみさんを抱きしめ返した。
それは…このみさんの照れ隠しってことを知ってるから。
交際2年5ヶ月。
そして今日。
私の周りで、幸せが生まれました。
私もなんだか、あったかい気持ちになった。
そんな二人を見て、私はお腹をみた。
微かに生きる命を、私はお腹を通してさわる。
すると、お腹をさする私の手のひらの上に、もう一つ手のひらがのった。
それは、佑の手のひら。
ニコッと、佑は笑った。
私はコクリと頷いた。
ーーー
その日の夜は、本当に幸せそうな挙式で幕を閉じた。