どうしてもママ、子供のまま。
DNA検査



私は病院に入る。

前、帰り際私に、「ちっちゃいママ、頑張れ」って励ましてくれた事務員さんは、今日は居なかった。





発行券を受け取って、待合室で待つ。

私がとった発行券は、またまた二番だった。




ちっちゃいママかぁ…







そうだよね…私まだ、17歳だし。


ママになるには、心も体も器が小さすぎる。






私なんかがママになれるのかな?

不安だな…




私はお腹を見下ろした。




まだ膨らんでもいないちいさい命だけど…ちゃんと宿ってる。


この時点で、私はもう義務的にママにならなければならない。




誰との子であれ、下ろすことはできない。








ママになるには、どうしたらいいんだろう?
一昨年この世から居なくなっちゃった私のお母さんに聞いてみたいよ。


どうやったの?





よくテレビとか本で、若い人の出産の話とかあるけど…あんなに綺麗な世界じゃない。


みんなと違って、誰との子か分からないから。






ちっちゃいママ…か。
本当に何もかもちっちゃいや。



………おっぱいも。











「二番の方診察室へお入りください」


私の持つ診察券の番号が呼ばれて、私は引き寄せられるように診察室にはいる。








今回も…堺先生だといいな。


なんか、聞きやすいから。






私はガラリと扉を開けた。



『失礼しま……』







失礼しますと言おうとして、私は言葉を失った。





だって、目の前に…堺先生と……佑が。

それに、佑…泣いてるし。





堺先生は苦笑いしてため息をついた。









入り口で立ちすくむ私に近寄って、泣顔で佑は私に抱きついた。


きつくきつく。






『お腹の子…つぶれちゃうよぉ、佑…』


「…よかった」


『え?』






佑は何かつぶやいた。





『え?』



私は堺先生に視線を送って、佑の代弁を求めた。
堺先生はため息まじりに、私に言った。






「DNAの結果が出たの」


『それで………』


「あなたのお腹にいる赤ちゃんは、南條佑、彼との子よ」


『え……』







嘘…

うそ…





「おれ……怖かった…」



耳元で、泣き殺す声で佑は言った。

一言、怖かった、と。




「でも…よかった。…おれ、おれ、がんばるっ…から…」




『佑…』








まったく、みっともないよ佑。

こんなに看護師さんがいるのに、泣いちゃダメだよ。



堺先生だって居るのに。

みんな見てるよ…





そんなことを考えてた私も、顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。



安心した。

嬉しかった。



こんな形の出産になっちゃったけど、あなたとの子でよかった。



わたしたちは抱き合って泣いた。







そんな私たちを見て、堺先生が言った。




「彼氏さんもイケメンだし、あなたも可愛いし。きっといい子が生まれるわね」




周りの看護師さんが笑った。







佑と私も、泣きながら……笑った。




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