どうしてもママ、子供のまま。
『うーーー、寒くなってきたなぁ』
私の家のちかくの暗い道は、とことん暗い。
それは、街灯がないせい。
自分の足音なのに、それさえも怖がってしまうくらい静かな場所。
こんなところにスーパーなんてあるの?なんて思うそこの君。
あるのよ。もう少し歩いたところに、結構賑わうスーパーが。
最近新装開店したから、更に人が増えてきた。
持っていた携帯をみると、時刻は5時50分。
吹き抜ける風がとても冷たい。
足早に道を通り、スーパーについた。
お店の中は、突き刺すような寒さの外とは違い、あったかくて心地がいい。
そのまま進み、レジ近くの野菜コーナーのところで、3つで200円のたまねぎを買う。
『あ、レシートいらないです』
消費税を込んだ値段ぶんのお金を先に出して、商品を受け取る。
店員さんが丁寧そうに出してくれたレシートを、手を立てて拒否した。
……レシート拒否したの初めてだわ…。
たまねぎが3つはいったレジ袋を片手に、私はまたスーパーを出た。
相変わらず……寒い。
相変わらずってか、さっきより寒さが増してる。
『早く帰らなきゃ』
やっぱり佑におつかいさせればよかったなーなんて考えながら、私は家路についていた。
そのとき。
目の前から、ダルそうに歩く……男?の人が歩いてきた。
っていっても、反対車線だけど。
マスクをかけてて…上下黒のジャージ。
足つきがヨロヨロしていて、なんだろ……酔ってるのかな?
なんだか気味が悪くなった私は、さっきより歩くスピードを早めた。
うううう…なんか怖い。
痴漢なんているのかな?
いやあれ痴漢とかそんなんじゃないよね?
うんうん、とりあえず早く帰ろう。
その瞬間だった。
「ねぇねぇ」
真後ろで、聞いたこともない鼻声が聞こえた。
『きゃっ』
咄嗟に私は首を絞められる。
『……うぐ…っん』
「へぇ、たまねぎ買ったんだ。今日はバーベキューでもするの?それとも、ハンバーグかな?それとも…オニオンスープとかかな…美味しそうだね…」
そういうと、不気味に笑う後ろの誰か。
誰かはわからない。
けど聞いたことない声だった。
「髪、サラサラだね。ねぇねぇお姉ちゃんはさ…好きな人とかいるの?」
『っ』
私の肩に顔を置きながら、ニヤニヤするその誰かは、私の制服の上から、胸を触ってきた。
「豊富だねぇ…」
『…っ』
「彼氏とか…いるのかな?居そうだなぁ、そんなに美味しいカラダしてたら…」
その途端。
「アハハハハハハハハハハハ!」
私は後ろから聞こえたクソでかい笑い声に戸惑う。
そしてその瞬間、後頭部に走る痛み。
何度もなんども、後ろにいる誰かに頭を殴られた。
ーーーーーーーバサッ。
持っていた、たまねぎをいれたレジ袋を落としてしまった。
その瞬間、ぴたりと止んだ笑い声。
その数秒間の妙な沈黙が、逆に恐怖だった。
【逃げなきゃ】
そう思った瞬間。
急に肩をつかまれ、強引に唇を奪われた。
目の前で目を瞑りながら私の口に舌を這わせてくるその誰かは、唇が乾燥している。
誰!?
勢いは収まることがなかった。
後ろにある冷たいブロック塀に押し付けられて、何度もなんどもキスをされる。
…キスっていうよりは、強引に唇を押し付けた行為。
その誰かの手は、胸だけにとどまらず、だんだん下へ伝った。
『ん…ふ、やめ!て!』
塞がれる口をなんとか無理に動かして抵抗するも、相手の力にはかなわない。
何か話すたびに、何度もなんども頬をグーで殴られる。
そのたび口に広がる、鉄の味。
その誰かの行為は、最低だった。
私を道路に押し倒して、着衣を脱がせて、そのまま、挿れてきた。
何度もなんども、その誰かは私の上で腰を振った。
……痛い。
いやだ。
やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。やめて。
最後には、下腹に感じる、何かが入った感じ。
「はぁ…子供出来ちゃうかもね」
その誰かは、ニヤ、と笑いながら、私を残してその場を去った。
…………え?
〝子供出来ちゃうかもね″…?
………全てを悟った。
私…レイプ……されたんだ。
どうしよう、どうしようどうしよう。
佑に会いたい。たすけて、佑。
けど、佑に会わせられる顔がなかった。