どうしてもママ、子供のまま。
病と薬。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、無駄に綺麗な1日だった。
隣でスヤスヤと眠る最愛の人。
昨日寝たとき、固く手をつないで眠った。…のが、朝になってもまだ繋いであった。
『佑…』
隣で正しい寝息を立てて眠る佑の寝顔を眺める。
睫毛…は、そんなに長くはないけど、濃くて太い。
幅の広い奥二重のラインが、目を瞑ってもうっすら線を残している。
形のいい…唇とか。
『だいすき……』
隙だらけの寝顔に少し笑みがこぼれる。
愛しくなった。
だから…ちょっぴり。微か触れるか触れないかくらいの、キスをした。
「なんだ、昨日足りなかったのか?」
その瞬間、さっきまで眠っていた顔をぱっちり開けて、佑が起きた。
口角は、イタズラそうにあがっている。
『ゆっ…佑!寝てなかったの?』
「…ん、お前が起きる前から起きてた」
『え…そうだったんだ』
「朱美、だいすきっ」
『きゃあっ』
いきなり告白してきたかと思えば、急に手を引かれて抱きしめられる。
はぁー…不意打ちだなんて。ずるい。
ギューされてるから、後ろにある佑の顔は見えない。
佑は、私の髪を撫でながら、ポツリと話した。
「昨日の痴漢野郎は忘れろ。それより昨日…痛くなかったか?」
撫でていた髪に、顔を埋めて佑が話す。
あ…今の佑……照れてるんだ。
佑は、いつも行為の後、私の体を気にしてくれる。
佑曰く、最初は優しくするんだけど、私を見てるとコントロールが効かなくなる…らしい。
確かに、初めて佑と夜を交わした日は、後々痛くて涙が出た。
初めてだったから、っていうのが原因なんだろうけど…
佑はそれから私が痛くないように、って気にしてくれるようになった。
顔を埋めるのも、昨日は初めてゴムなしでやったからだと思う。
『大丈夫だよ。それより…佑さ』
「ん?」
私は体勢を変えて、佑の顔が見えるように上半身を起こした。
『もし……わたしとの子供が出来ても…いいの……?』
ぽかん、と口を開ける佑。
あー…マズイこと、聞いたかな…
『あっ、ゴメンっ。忘れて!私朝食の準備…してくるからっ』
なんだか恥ずかしくなって、私は慌ててベッドから降りる。
そのとき、佑に右腕を掴まれた。
『っえ』
きゅうに腕を掴まれたことに、びっくりする私。
恐る恐る佑の顔を見ると、さっきのポカンとした顔とは違った、冷静な顔で私を見つめていた。
「おれ、別に構わないよ?」
佑は、口早で話した。
「つかさ、つか、なんつーの、お前との子供が嫌なら昨日みたいにゴムなしなんかでヤンねーし!馬鹿!」
照れながら、でもガッチリ私の右腕を掴みながら話す佑。
今、佑と目を合わせろなんて言われたら困難すぎる。
私が合わせようとしても、佑は合わせる気配はない。
……照れてるんだから。
『佑…佑……ありがとうっ』
私は佑の胸に飛び込んだ。
「おん。わかったから、泣くな」
……ごめんね。これは嬉し涙だよ。
佑…わたし幸せ。
ありがとう。だいすき。