狂気の王と永遠の愛(接吻)をイメージ画集とつぶやきの場
縛られた過去
(あの男がこれほどまで彼女に執着する理由はなんだ? そして、時折見せる異常なまでの感情の昂りはかなり危うい……)
別室で仙水とアオイの会話を聞いていたセシエルは遠くを見つめるような目で呟いた。
「……彼は己に閉じ込めた過去をうまく整理できていないようだね。強すぎる想いが体中から溢れでている……」
その言葉にセシエルの呪縛から自力で抜け出したキュリオは彼の背後で着衣を整えながら皮肉を口にする。
「戻らないものを欲したところで……所詮は過去。未来へ目を向けぬ王を持ったこの国の民は不憫だな」
「…………」
(キュリオが言うことも一理ある。
王が心を乱せば民が迷い、国を大きく傾かせてしまうことになるだろう。しかし……彼の絶望の中に小さな希望が見える……それがアオイさんだとでも言うのか?)
一行に見えない解決の糸口。セシエルは少しでも情報を集めようと二人の会話に耳を傾けようとするが……
「そこにいるのは誰だい? 立ち聞きとは感心ならないね」
部屋の扉の前に小さな気配を感じ、視線鋭く咎めるように言い放ち言葉を待つ。
『……ちょっと話があんだ。どっちか出てきてくんねぇか?』
適度な幼さを残す声から、アオイよりの幾分年下の印象を強く感じさせる少年のものだった。
「…………」
「…………」
無言のまま顔を見合わせたセシエルとキュリオ。
しかし……
「私が行こう」
すぐさま立ち上がったセシエルが扉の前へ向かい、キュリオにはアオイを探すよう伝えて部屋を出る。
「なんだよ……あんたもでっけぇな……」
淡い光を纏ったような美しいセシエルの姿に早速後ずさりしながらたじろぐ少年。
「……君のところの黒髪の青年ほどではないと思うが否定はしないよ。取り敢えず場所を移そう」
「黒髪って九条のことか……? あいつは愛想も口数も全部身長にいっちまったからな! しょうがねぇって!」
「…………」
敵意もなく爽やかに笑う少年は跳ねるように軽快なリズムで奥の部屋へ向かう。その後ろを音もなくついて行くセシエルは、姿の見えない他の気配を探りながら考えを巡らせていく。
(こちらの様子を警戒しているのは二人……九条という青年とアオイさんを斬りつけた刀の男か……)
「そう言えばあんた"セシエル"だっけ? 俺はソウガ!」
片足でバランスをとるように振り返った少年。今度は臆することなく自らの名を口にしながらバルコニーの手摺へ腰かける。
「……君も私の創造したあの空間に?」
「居たぜ。俺たちは一人が引っ張られれば大抵全員巻き込まれるからな。ただここに居たせいであんたたちには見えなかっただけだ」
「…………」
("一人が引っ張られれば……?" ただの仲良しの集まりではないということか……)
「……で、話だけどさ。……もう俺たちに関わらないで貰いたいんだ」
視線を下げたまま、なぜか辛そうに告げる少年にセシエルは首を傾げる。
「それはこちらの台詞だよ。私は悠久に及ぶ危険を見逃せない。逆に聞きたいくらいさ……君たちは何が目的なんだい?」
「そんなの……俺たちじゃ仙水を止められねぇから頼んでんだろ! あいつの体はボロボロなんだ!!」
別室で仙水とアオイの会話を聞いていたセシエルは遠くを見つめるような目で呟いた。
「……彼は己に閉じ込めた過去をうまく整理できていないようだね。強すぎる想いが体中から溢れでている……」
その言葉にセシエルの呪縛から自力で抜け出したキュリオは彼の背後で着衣を整えながら皮肉を口にする。
「戻らないものを欲したところで……所詮は過去。未来へ目を向けぬ王を持ったこの国の民は不憫だな」
「…………」
(キュリオが言うことも一理ある。
王が心を乱せば民が迷い、国を大きく傾かせてしまうことになるだろう。しかし……彼の絶望の中に小さな希望が見える……それがアオイさんだとでも言うのか?)
一行に見えない解決の糸口。セシエルは少しでも情報を集めようと二人の会話に耳を傾けようとするが……
「そこにいるのは誰だい? 立ち聞きとは感心ならないね」
部屋の扉の前に小さな気配を感じ、視線鋭く咎めるように言い放ち言葉を待つ。
『……ちょっと話があんだ。どっちか出てきてくんねぇか?』
適度な幼さを残す声から、アオイよりの幾分年下の印象を強く感じさせる少年のものだった。
「…………」
「…………」
無言のまま顔を見合わせたセシエルとキュリオ。
しかし……
「私が行こう」
すぐさま立ち上がったセシエルが扉の前へ向かい、キュリオにはアオイを探すよう伝えて部屋を出る。
「なんだよ……あんたもでっけぇな……」
淡い光を纏ったような美しいセシエルの姿に早速後ずさりしながらたじろぐ少年。
「……君のところの黒髪の青年ほどではないと思うが否定はしないよ。取り敢えず場所を移そう」
「黒髪って九条のことか……? あいつは愛想も口数も全部身長にいっちまったからな! しょうがねぇって!」
「…………」
敵意もなく爽やかに笑う少年は跳ねるように軽快なリズムで奥の部屋へ向かう。その後ろを音もなくついて行くセシエルは、姿の見えない他の気配を探りながら考えを巡らせていく。
(こちらの様子を警戒しているのは二人……九条という青年とアオイさんを斬りつけた刀の男か……)
「そう言えばあんた"セシエル"だっけ? 俺はソウガ!」
片足でバランスをとるように振り返った少年。今度は臆することなく自らの名を口にしながらバルコニーの手摺へ腰かける。
「……君も私の創造したあの空間に?」
「居たぜ。俺たちは一人が引っ張られれば大抵全員巻き込まれるからな。ただここに居たせいであんたたちには見えなかっただけだ」
「…………」
("一人が引っ張られれば……?" ただの仲良しの集まりではないということか……)
「……で、話だけどさ。……もう俺たちに関わらないで貰いたいんだ」
視線を下げたまま、なぜか辛そうに告げる少年にセシエルは首を傾げる。
「それはこちらの台詞だよ。私は悠久に及ぶ危険を見逃せない。逆に聞きたいくらいさ……君たちは何が目的なんだい?」
「そんなの……俺たちじゃ仙水を止められねぇから頼んでんだろ! あいつの体はボロボロなんだ!!」