僕らはそうしてこうなった
誘拐

「おじさん、出して。冷たい、寒い、ここから出して」
僕らは小さな檻の中に入れられていた。
ここはおじさんの家なのだろうか。決して汚くはない普通の家に、不釣り合いな檻が1つ。
大きな都会であった動物園で見たライオンという動物が入っていた大きさの檻が今ここにある。

僕ら二人で入ると少しだけしかスペースがなく、二人で横には眠れない。
「おじさん、僕らを騙したんだね。家に返してよ」
目の前には薄汚い笑みを浮かべて僕らを見下ろすおじさんがいる。
その横には若いお姉さんが立っている。
「騙したなんてとんでもない。僕の家に招待しただけだよ。ちょっと手荒だったけどね」
「ひどいよおじさん。お母さんの所へ帰らせて」
ネスが檻をトントンと弱く叩く。手が冷たくて、お腹も減り、頭がガンガンとするため、力が弱くなっている。
エールが大泣きする。
「帰らせないよ、君たちは誘拐されたんだ。一生ここで暮らすのさ」
おじさんはニヤニヤと笑う。
若い女の人もニヤニヤとしている。

僕らは喚くのをやめて、震える手を絡ませて心を休ませた。とうてい安心することなどできないが、やっぱり二人一緒にいた方が安心する。
おじさんは僕らを檻の外から観察していたが、時間が経つと席を外した。
若い女の人も同時に席を外す。
僕らは辺りを見回した。この家のこと、まだ何も知らないため。
僕らの家と少し似ている。台所があり、大きなテーブルが1つ。暖炉もあって、ちょうどいい暖かさ。

疲れた僕らは涙で濡れた顔を拭いて 抱き合って眠った。
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