恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
けれども、真琴は知っている。
無精ひげを生やして、頭を掻きながら大あくびをする古庄を。
頬にご飯粒を付けながら、なりふり構わず空腹を満たす古庄を。
やきもちを焼いて、思いつめた表情を見せる古庄を…。
こんな完璧な外見とは程遠い部分を見せてくれるのも、真琴が一番近くにいられる存在になれたからだ。
こんな古庄の寝顔を、こんな風に独り占めして、のんびり眺めていられるのも、古庄に愛されたからこそだ。
そして、古庄はどんな時も揺るがない愛情を注いで、真琴を守ってくれる…。
「……ありがとうございます。……さっきは、ごめんなさい」
暗い部屋の中に浮かぶ古庄の寝顔に向かって、真琴は思わずつぶやいた。
先ほどは言いたくても言えなかったことを口にすると、想いが高ぶって堪えきれず、また真琴は涙をこぼした。
その涙の中に、ずっと前から存在している真理を、やっと見つけ出して言葉にする。
「………あなたを、愛しています……」
本来ならば、ちゃんと古庄の目を見て伝えなければならないことだと思う。
でも、真琴はあまりにも不器用で、この想いの言葉を、どんな時にどうやって伝えたらいいのか分からなかった。
まだ今は、こうやって古庄の寝顔に語りかけるだけで精いっぱいだった。