恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
そう訊かれて、古庄は手を止めて、谷口に向き直った。
歴然と詮索している。
このまま谷口のペースにハマってしまって本当のことを言おうものなら、真琴のことがバレてしまう。
「どんなって…、別に普通の婚約指輪だよ。ダイヤが真ん中についてるプラチナの…」
このくらいの説明なら、真琴がはめている指輪と整合させることは難しいだろう。
しかし、敵もさる者、そのくらいでは引き下がらない。
「じゃあ、指輪に刻印はした?なんて、刻んでもらったの?」
「……なんでそんなこと、聞きたいの?」
古庄は逆に質問する。
谷口が後で真琴から指輪を見せてもらって、ここで言ったことと照らし合わせるのは、火を見るよりも明らかだ。
「いいじゃない。指輪買うのに協力してあげたんだから、そのくらい教えてくれたって」
「それは…」
何と言って答えようか、古庄は少し言葉をためた。
「実を言うと、はっきりと覚えてないんだ。今度確認してから教えてあげるよ」
そう言いながら、苦しい言い訳をごまかすように、いつもの極上の微笑みを忘れなかった。
すると谷口は案の定、
「なんだ、そうなの…」
と、顔を赤らめさせて、それ以上は詮索しなかった。