恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
その時、どこかへ行っていた真琴が、自分の席に戻ってくる。
古庄はビクッと我に返り、居ずまいを整えて新聞を持ち直した。
そんな古庄を、真琴は椅子に腰かけながら不思議そうに覗き込んだ。
「どうかしたんですか?」
「…いいや、何も」
スケベな想像は取り払って、対照的で爽やかな笑顔を作る。
すると真琴は、その不自然な爽やかさに訝しそうな顔をしたが、何も言わずに自分の机に向き直り、一つ溜息を吐くと仕事を始めた。
その深い溜息に、真琴の言葉にならない“疲れ”がにじみ出ている。
依然として真琴のつわりは続いており、古庄はそれをどうしてあげることもできないもどかしい日々が続いていた。
今の真琴は、クリスマスケーキを食べるどころか、その甘い匂いを感じただけで吐き気を催してしまいそうだった。
ましてや、愛し合うことなんて…もってのほかだ。
それでも、何もしなくても、一緒にいることはできる。
真琴がつわりで辛い思いをしている分、真琴の手足になるように尽くして、心地いい環境を作って、愛の言葉を囁いて…。
少しでも真琴が喜んでくれるのならば、古庄は何だってするつもりだった。